プログラム設計やソフトウェア関連のコンサルティングなど、コンピュータ周りの業務を幅広く手掛ける、株式会社コンピュータ技研。
ビジネスを推進できる優秀な人材の育成に力を入れ、『次世代を担う若手が、素敵な人生を歩めるように』をテーマに、一年間のセミナープログラムを実施しています。
今回は第2回社内セミナー(大阪編)です。
第1回のセミナーでは『既成概念を壊す思考法』をテーマに、既成概念を壊してより高い理想を思い描くための思考法を学んできました。
第2回は、思い描いた理想に近づくための具体的な方法論を学んでいきます。
講師は前回に引き続き、株式会社mannaka・株式会社onakasuita他複数の会社経営に携わる柴田雄平氏。
実際のビジネスシーンはもちろん、プライベートでも役に立つビジネスフレームワークも伝授いただきます。
※前回までのセミナーの様子についてはこちら
第1回社内セミナー(大阪編)
第1回社内セミナー (東京編)
今回の大阪編での参加者は5名。まだ入社前の内定者メンバーや、現在ミャンマーで勤務しているメンバーも参加しています。このセミナーに初めて参加するという方もいたため、まずはこのセミナーの目的と前回の振り返りからスタートしました。
第1回セミナー時に感じた東京オフィスと大阪オフィスの雰囲気の違い、出てきた意見の違いを発表すると、メンバー一同、興味津々。
自分の意見、会社に言えていますか?
これからの時代を生き抜く企業になるために
セミナーに入る前に、柴田氏からメンバーへの質問タイム。
「今の会社は理想の会社でしょうか?『まだ改善の余地がある』と思う人は手を挙げて」
隣同士で様子を伺いながら、ちらほら手が挙がります。
「では次の質問。会社に自分の意見を言えていますか?
会社や上司、同僚に対して、言いたいこと言えていますか?」
この質問にはなかなか手が挙がらないようです。
柴田氏はさらに続けます。
「多くの会社の組織構造はピラミッドみたいになっている。上から、代表取締役・役員クラス、マネージャーなどの管理層、その下にメンバーがいる、といった形。この階層間で、例えばメンバーのみんなから上のマネージャー層に対して、その逆にマネージャー層から下のメンバーに対して、相互に意見を言える関係を作っていくことが、会社の未来にとってすごく重要。」
そして柴田氏はその理由を次のように説明しています。
「高度経済時代、多くの企業はトップダウン型の経営で売上げが伸び、成功してきました。
しかし、技術の進化もスピーディになり、経済環境も日々変化する現在では、過去の経営スタイルは通用しない時代になりつつあるといいます。会社も時代に合わせて進化し続けなくてはなりません。」
今20代・30代のメンバー層がマネジメント層・トップ層になっている頃には、さらにその流れは加速しているでしょう。これからの時代を生き抜く組織を作っていく上で、より沢山の意見が出る環境、階層を超えてバンバン意見を言える環境を作っていくことは、とても大事だと言います。
こうした社会的背景も踏まえ、今回のワークショップでは基本のビジネスフレームワークを学んでいきます。
基本のビジネスフレームワーク
①ASIS/TOBEフレームワークで「理想」と「現状」を見える化
意見が言える環境と言っても、何でも言いたいことを言っていいわけではありません。意見を言える環境を作るには、まず会社内で目指す「理想」と「現状」の共通認識を持つこと、そしてその間にある「ギャップ」を発見することが必要です。
それらを可視化していくために有効なのが、「ASIS/TOBE」フレームワーク。
理想と現状を比較した際、間に生まれるギャップ。それが理想にたどり着くための「問題」であり、それを把握して初めて、問題をクリアするための「課題」の設定が可能になります。
これはどんな仕事でも同じだと柴田氏は言います。
「コンピュータ技研の事業に照らして考えてみよう。『ある業務をシステム化する』という目標があったとすると『システム化されている』のが理想の状態ですよね。それに対して現状は『システム化されていない』ので、理想と現状の間にギャップがある。そのギャップを埋めていくためのステップに、『問題の可視化』としての設計書作成や開発メンバーの選定があって、それを経て次のステップである開発スケジュールの設定やタスクの割り振りといった『課題の設定』に入っていく。」
日々の業務に照らした説明で、よりメンバーたちの理解度が高まったようです。
基本のビジネスフレームワーク
②6W2H/MECEフレームワークで問題の具体度を上げる
ASIS/TOBEフレームワークで可視化できた理想と現状のギャップ。では、そのギャップをどのように埋めていけば良いのでしょうか。
柴田氏は「理想と現状の間にあるギャップは、すぐに全て埋めることは難しい」とした上で、問題をより具体化・整理して、一つずつ埋めていくことが重要だと言います。
「複数の問題が点在している時、それらを分類して、階層と関係性を整えていく必要がある。難しいけど、これができるビジネスマンになってほしい。」
ここで、問題の分類・整理をするのに有効な、「6W2H」「MECE」2つのフレームワークについてご説明いただきます。
■6W2H
様々な角度から問題について考え、問題を具体的にイメージしやすくする手法。
特に会社としての問題について考える際には「How much」という視点を持つことが重要だそうです。
■MECE
Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略で、「漏れなくダブりなく」という意味で使われます。
点在する問題を分類→階層と関係性に分けて整理していく、これが問題整理の基本の流れ。
またその際に、「情報に抜け漏れやダブりがないか」といった視点を持つことも重要になってきます。
それを視覚化するのが、下のMECEフレームワークです。
これらのフレームワークを活用することで、抽象的だった問題を具体化していくことができるのと同時にチーム全員で共通の認識を持つことができるようになるといいます。
さて、次はいよいよ実践編です。これらのフレームワークを活用してみましょう。
フレームワークを活用しよう
①コンピュータ技研の理想と現状をみんなで考える
柴田氏から教わったフレームワークを活用して、「コンピュータ技研の改善点」について全員で考えてみます。
セミナー冒頭の質問タイムで、「会社にはまだ改善の余地がある」と答えたメンバーは半数を超えていました。では具体的に、メンバーたちが思い描く理想の会社はどのようなもので、現状はどんな会社なのでしょうか?
各自で考える時間を5分間取り、発表することになりました。
周囲の人とも相談しつつ、個々で検討。皆さん、なかなか苦戦しているようです。
「理想」が出てこない人は現状で割と満足しているということかもしれませんね。
5分が経過し、個々の発表へ。
すると、下記のような意見が上がってきました。
■理想
- 年収500-600万
- 自社製品がある
- 人が自然と集まる
- 利益率が高い事業
- ワークライフバランスが取れている
- 社内イベントはみんなで企画・運営する
- 年収UP
- 残業が少ない
- 最新のスキルを学べる
- 技術がある
- 手当全般(住宅、出張、退職)が充実している
- 実力主義
- 若手に感謝してくれる
- 自社教育/勉強会(スキル磨きたい)
- 社内コミュニケーションの機会が多い
■現状
- 年収300-400万
- 人的資源のみ、自社製品はない
- 利益率が低い
- 採用難
- 業務システムのスキルが中心
- 労働環境が現場依存
- 会社の飲み会、旅行などのイベントは若手中心に企画・運営
- 残業が多い
- 技術を身につける環境がない、勉強会などがない
- 手当は不十分
- 評価制度は年功序列気味
- 若手が会社のイベントを運営していることに感謝が無い
- 社員同士の交流が少ない
「もっとスキルをつけたい」「自社製品がほしい」などの意見から
「社内イベントの企画はいつも若手ばっかり。感謝してもらえないし。」といった日常の不満まで実に様々な意見が飛び出します。各自の発表中、「あーわかる!」「それ僕も思ってた」と言った共感の声が飛び交いました。
普段何となく言いにくかった、「会社がもっとこうなったら」という気持ちを表に出す、良い機会となったようです。
では次に、問題の分類・整理に進んでいきます。
フレームワークを活用しよう
②コンピュータ技研の問題を分類・整理する
「いろんな問題が出てきたね!じゃあさっきのフレームワークを使って、この問題を分類してみよう」
ホワイトボードに書き出された問題に番号を振り、順に読み上げながら分類していきます。
全員で相談しながら、8つのカテゴリを作ってみました。
- お金
- 提供価値
- 売上・利益
- 採用
- 社風
- 労働環境
- 評価制度
- ヒューマンリソース
こうして分類してみると、
多くの社員が「お金」に関して、何かしらの不満や課題感を持っている様子。
これに対し、柴田氏は次のように述べています。
「問題を感じている人が多い領域から改善していけば、
会社は良くなるってことだよね。みんながより、働きやすくなるはず。」
また、問題解決の優先順位づけについては、”四象限”の視点で問題を分析するのが良いそうです。
重要度(高/低)・緊急度(高/低)の4つの枠に当てはめたとき、重要度も高く緊急度も高い問題であれば、それはすぐに解決するべき問題。共に低い問題であれば、それは現時点では放っておいてよい問題であると判断でき、社内で上層部に交渉するような場面でも説明がしやすくなるといいます。
現状を改善する具体的な策を考えてみよう
今回最も多くの社員から出た「お金」の問題を改善していく策として
どのようなものが考えられるでしょうか。
例えば「年収」を例にして考えてみます。
【理想】500-600万円
【現状】300-400万円
→100-200万円のギャップ
さらに、このギャップを埋めるために
思いつく限りの原因と改善案をメンバーから挙げてもらいます。
- ■原因
- まだ年齢が達していない
- 社歴が浅い
- その年収に達するだけの仕事をできていない
- 評価制度が機能していない
- 昇給チャンスが年1回
- 評価が上からのみ
- ■改善案
- 昇給を年1回→4回にする(下がる可能性もあるが、上がる可能性をとる)
- 年齢ではなく勤続年数に評価項目を変える。(長く勤めている=会社への貢献度が高い)
- 利益の高い案件を優先的に受ける。そのために、利益率がオープンな風土を作っていく。
柴田氏曰く「評価制度を変える際、最終的には会社が『どんなチームを目指すか』が重要になってくる」とのこと。
「売上の高さを優先にするのか?利益率の高いチーム?売上の伸びは緩やかでも、人が辞めないチームが良いのか?チームミーティングが大事だよね」
こうした柴田氏からのアドバイスも受けつつ
メンバーからも様々な角度から意見が上がるようになってきました。
「派遣先から支払われる委託料と利益率がわからないと、自分たちの出している価値がわからない」
「結局給与を上げるには技術力の底上げが必要。意外とこのギャップの間は”勉強会”なのかも?」
「勉強会をするためには残業時間を減らして・・」
Next C.T.Lのプロジェクトは何も新規事業立ち上げだけを目的としたものではありません。
メンバーたちの力で会社をより良くし、次世代の若者へ繋ぐこと。
評価制度の再構築、社内環境の改善も立派なテーマになりそうです。
理想と現実のギャップを明文化するくせをつけていこう
普段は声に出しにくい会社の課題や改善点について話すことができ、最後には心なしか晴れやかな表情のメンバーたち。理想と現状の整理、問題を具体化していく方法を学んだことで、「何か変えられるかも」と言う意欲が湧いたようです。
最後に柴田氏より今日の総括を。
「今日、みんなで意見を出し合ってみてどうだった?会社に対して、本当は『こうなったらいいのに』という理想があったことに気づいたんじゃないかな。
だけど、大体の人はそれを声に出さないで周りに飲まれてしまう。
うちの会社は前からこうだから。で、間違えて転職しちゃったりする。
今日わかったと思うけど、問題を見つけて解決していけば会社は変えられるんだよ。
理想と現状の間にある”問題”はなんだろう、と常に明文化するくせを全員がつけたら会社は変わる。
変えていかないと会社はずっと同じだから。」
最後にはオープン前の「Net C.T.L」メディアをみんなで見ながら談笑するシーンも。
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大阪オフィスでの第2回セミナーも無事終了。次回はさらにステップアップしたテーマとなるそうです。
また、次回セミナーまでの間に、東京オフィスでも第2回セミナーが実施されます。
東京オフィスのメンバーが思い描く理想の会社とは?
大阪オフィスとの違いはあるのでしょうか。
東京編のセミナーレポートもどうぞお楽しみに。